なぜ布を織るのか、糸を紡ぐのか?
マリアの懐胎は ペルセポネの場合と似ていた。三相のうちの処女の相をとる ペルセポネが聖なる洞穴の中で腰をおろして、大いなる宇宙の綴れ織りを織り始めると、そこへ男根を象徴する蛇に変身した ゼウスが現れ、救世主 ディオニュソスをみごもらせた [註3]。マリアも神殿で腰をおろし、運命の綴れ織りに織り込まれると「生命」を表すことになる、血のように赤い糸を紡ぎ始めると、天使ガブリエルが「彼女に入ってきた」came in unto her(『ルカによる福音書』第1章 28節)。この句は性交を表す聖書語法である。ガブリエルという名は文字通りには「天の夫」を意味する [註4]。
Campbell, Joseph.
The Mask of God : Primitive Mythology.
New York : Viking Press, 1959.
Augstein, Rudolf.
Jesus Son of Man.
New York : Urizen Books, 1977.