ジュバイル・ブヌ・ウマイルとブッドゥールとの恋物語(第328~334夜)
前島信次訳『アラビアンナイト(8) 東洋文庫290』1976年、平凡社
【あらすじ】
不眠に悩むアミール・ル・ムウミニーン(カリフ)ハールーン・アル・ラシードがマスルールを呼び、不眠から脱する手立ての提案を要求する。マスルールがいろいろな案を提示するが、どれもカリフの意にそぐわない。そのとき門前にダマスクスの道化者アリー・ブヌ・マンスール(以降の表記はイブン・マンスール)が控えていた。カリフはアリーを呼び、とっておきの話を要求する。アリーは自分の体験を話す。
以下アリーの話
アリーは毎年バスラのスルターン、ムハンマド・ブヌ・スライマーン・アル・ハーシミーから手当をもらっている。あるときスルターンが狩りに出かけたので一人きままにバスラ市街を歩きまわり、横丁に迷い込んで美しい歌声を聞いた。声の主の美しい女性はアリーの友人で宝石商ムハンマド・ブヌ・アリーの娘ブドゥールであった。ブドゥールはアリーに恋の悩みを打ち明ける。彼女が想いを寄せるのはシャイバーン族の統領ジュバイル・ブヌ・ウマイル・ウッ・シャイバーニー。二人は恋仲だったが、ある日女奴隷が彼女の頬に接吻するのをジュバイルが見てしまい、二人の仲は険悪になった。そこでアリーに文使いを頼む。アリーはブドゥールの文をもってジュバイルを訪ねる。ジュバイルはアリーを歓待し、豪華な夕食を振る舞う。(この宴席にカイナが登場)結局、アリーはブドゥールとジュバイルの仲を取り持つことができなかった。二人の感情はこじれてしまっていた。しかし、不思議なことに二人はお互いの言動が見ていたかのようにわかるのであった。
次の年にアリーがバスラにいって二人を訪ねると、今度はジュバイルの方がブドゥールへの恋に悩んでいた。アリーは再び2人の仲をとりもつ。アリーはブドゥールに手紙を書かせるが、彼女はなかなか素直な気持ちを書こうとしない。アリーの骨折りのかいあって、ついにブドゥールがジュバイルを訪ね2人は結婚する。アリーは2人を祝福しバグダードへと帰っていく。
話を聞いていたカリフの胸の苦しみもすっかりなくなった。
※あとがきによると「この物語はバグダード系の恋物語のひとつで、その特色ははっきりと現れている。(320頁)」
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貴邸には何か楽器はござりませぬか?
ここのところ、音楽抜きで、飲食にふけっておりましてなあ
★通常は飲食に音楽を伴う
「これ、シャジャラッ・ドッル!」と呼びますと、ひとりの女奴隷がその自室から返事をし
★カイナは自室を与えられていた
絹の袋に入れたインド人製作のウード
二十一の曲を順々に弾奏してから
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おそろしい叫び声をあげたかと思うと気を失って倒れてしまいました。
うちの主人が、これこのような発作を起こして倒れてはと心配のあまりでございました。
★音楽で発作を起こす→そんなにすばらしいのか。