ネット炎上の研究

田中 辰雄・山口 真一、2016年、勁草書房


ネット炎上の研究

近年の炎上を数量的に分析し、実例を挙げて書かれている。
煽り書き込みをする側の心理にはあまり言及がない。
同書の発売は2016年なので、2015年以前の例が使われていて「あの出来事はそんなに前なのか…」と懐かしい。
対象ソーシャルメディアとして、FaceBook、Twitter,2ちゃんねる(!)、さらにmixiの例もある。InstagramやYouTubeが無いのも懐かしい。

時代の変わり目には力の濫用が起きる。
中世の終わり=軍事力の濫用、産業革命=経済力の濫用、現在=情報発信力の濫用

1.ソーシャルメディアと炎上:特徴と発生件数
2.炎上の分類・事例・パターン
3.炎上の社会的コスト
4.炎上は誰が起こすのか
5.炎上参加者はどれくらいいるのか
6.炎上の歴史的理解
7.サロン型SNS:受信と発信の分離
8.炎上への社会的対処

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ある芸人が有名な殺人事件の犯人(未成年)と誤解され長期間中傷を受けた事件。
2008-2009年悪質な18人検挙。
ネットに騙された、本に騙された、ムシャクシャしていた、離婚して辛かった、なぜ一度しかやっていない自分が捕まるのか
など、勝手な言動。

筆者はインターネットは議論、討議の場と考えており、議論がなされない一方的な攻撃である炎上の弊害・問題は情報発信の萎縮と考えている。
議論からの撤退、議論はなされない、深まらない。
撤退する人の偏りによって、意見分布が歪む。中庸意見の人の撤退。撤退しない強い人=極端な意見。

サイバーカスケード(Sunstein2001) 異なる意見間の意見交流は乏しい。議論困難。

ネット上の喧嘩「フレーミング」とは違う。
仲介は機能しない。止められない。無視できない。謝罪しても収まらないことがある。

批判をしない=議論が提起し辛い。

著者が謝罪が有効な手段でないと考える理由
1.謝罪しても収まらない場合がある、謝罪までの過程で発信者が傷つく
2.本人の主張・意見を圧力で変えるべきではない、自由主義に反する
3.謝罪は議論の停止