女奴隷タワッドゥドの物語(第437~462夜)
前島信次訳『アラビアンナイト(10) 東洋文庫356』1979年、平凡社
【あらすじ】
豪商の息子アブール・フスンは、父の死後分別を失い放蕩を尽くしてついに全財産を食いつぶし、残ったのは父の残してくれた若い女奴隷タワッドゥドだけであった。彼女は容姿が美しい上に、諸般の技能に秀で教養も抜きんでていた。主人の窮地をみたタワッドゥドは自分をアッバース朝第五代カリフ、ハールーン・アル・ラシードに一万ディナールで売るように申し出る。
カリフのもとに連れて行かれるとタワッドゥドは自分の能力をアピールする。それを聞いたカリフはクルアーン、法学、詩学、論理学、医学、天文学など、彼女が通暁していると述べた学問や諸芸の専門家を呼び寄せ彼女の能力を試す。彼女は次々と専門家たちをうち負かし、専門家たちは衣裳を脱いで退散する。
※タワッドゥドがいつどこでこのような学問や技能を身につけたかについての説明はない。さらに、彼女は「カイナ」といえるのだろうか。
あたくしの代価として金一万ディナールをご請求になって下さいませ。
350
カリフさまは一面のウード(琵琶)を持ってくるようにと侍臣にお命じになりましたが、
もとの持ち主は、恋人とへだてられて、異境にさすらいの境遇を送った人でありましたが、
そのウードは、サフラン色の絹の飾りひものついた真紅の繻子の袋に入れられて運ばれてきました。
351
弦をはじいて十二の曲をかなでいで、